読書

室井尚『哲学問題としてのテクノロジー』

技術は身体の拡張であるという話から、話の多くが情報社会の話に割かれる。情報伝達ネットワークの複雑化と、マスメディアの繁栄。近代では知的主体が技術を用いて環境と対話していたが、現代では情報の氾濫によって人間もシステムの中の記号へと溶けていく…

中島京子『小さいおうち』

山手の小さな洋館の、美しい若奥様と女中。時のふるいにかけられた回想記は、日記の規則的なリアリズムとはまた違って美しい。

井上ひさし『東京セブンローズ』

人の記憶はあっという間に風化してしまう。ひと時口にした思考も思想も、大概のものはそのうち揺らいでしまう。しかし、書き留められた言葉の寿命は長い。

水木しげる 『水木しげるのラバウル島戦記』『総員玉砕せよ!』

『水木しげるのラバウル戦記』 「このあたりはナンバーテンボーイが出そうだ」というので、ぼくが先頭で、銃に弾をこめて歩かされる。 いちばん元気そうだからか、それともまっ先にやられてもよいからというわけかな。 しかし、いちばん前を歩くのは気持ちが…

井伏鱒二『遙拝隊長・本日休診』

このブログをわざわざ読みに来てくれるような人はみんな知っているだろうけれど、井伏は人間の悲哀を書くのがうまい。山椒魚の悲哀を書くのもうまい。そして井伏の悲哀は、どうにも対象の愚かさとともにある。致し方なく愚かな人間たち。

大岡昇平 『野火』 要約

頁をめくるために目をそむけていた。