水木しげる 『水木しげるのラバウル島戦記』『総員玉砕せよ!』
「このあたりはナンバーテンボーイが出そうだ」というので、ぼくが先頭で、銃に弾をこめて歩かされる。
いちばん元気そうだからか、それともまっ先にやられてもよいからというわけかな。
しかし、いちばん前を歩くのは気持ちがいい。」
兵士として派遣されてるはずなのに、水木しげるはヤバいくらいにのん気。
魚雷が来たから見張り台から叫んでも、誰も聞いてくれない。そんなときは「しかたなく、魚雷観察をすることに」してしまう。ヤバい。古兵に殴られまくりながらも、ジャングル暮らしを楽しんでしまう。出会った現地人とすぐに仲良くなっちゃう。そして古兵に殴られる。
彼は最後まで兵士の眼をもたなかった(実際戦ってない)。だから古兵に殴られ、現地人と仲良くなれる。『野火』の眼が「末期の眼」だったなら、これは完全に「ただの眼」。描かれる絵も、何かを強く伝ようとするわけでもなく、林間学校の思い出写真のよう。
『総員玉砕せよ!』
「わしも職業軍人のはしくれだ。死に場所を得たいのだ。」
若い将校の"死に場"のために部隊は玉砕する。もう、ただただ意味不明。(ただ、戦中ネイティブ世代の彼は"大人"と違って、死んだ人に対して不義理に生きる方法を知らなかったのだろう。その将校のさらに後ろにはのうのうと生きのびた参謀達がいるのだ)